ピクスタの企業文化を言語化してみる


会社がリモート移行して4ヶ月以上がたったが、移行当初はそれなりに懸念があった。

1人暮らしの若手は煮詰まってしまったり孤独にさいなまれて何人か失踪者が出てしまうのではないか?

また対面で話す機会がなくなり、誤解やすれ違いが発生してギスギスしたりストレスが増してしまうのではないか?等。

しかし4ヶ月以上がたっても、懸念していたことは起こらず、僕が見えてる範囲ではあるが、メンバーほぼ全員が元気ハツラツに仕事をしている笑。

これには不思議を通り越して感動すら覚えているのだが、元々気質的にインドア派が多いという特性はある。

ただ本質的には、実は当社の企業文化が、リモートワークでさらにうまく作用しているのでは思うようになってきた。

そして先日タイムリーに企業文化についてのとてもよい本を読んだ。

Who You Are
〜君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる〜


この本は素晴らしいので、全起業家、全経営幹部は読むべきだと思うが、これまでなんとなく感じていた自社の特徴や価値観らしきものを、クリアに「企業文化」として捉え、それが企業活動においてとても重要な役割を果たすということがよくわかる。

短期的に成功するのはプロダクトのインパクトやタイミングにより可能かもしれないが、中長期で成功し続けるには企業文化の構築と持続性が不可欠ということもよくわかる。

この本では、誰も見ていないところで、会社のメンバーがどう行動するかが企業文化なのだと書いてある。まさにその状況がリモートワークによって顕著になっており、当社がリモートワークでうまく回っているのも企業文化によるところが大きいと再確認したのであった。

ということで、無謀にも我が社の企業文化について言語化してみたいと思う笑。

-----

ピクスタの企業文化の特徴は大きく5つに分けられると思っている。

「フラット」「自律自走」「誠実さ」「思いやり」「コトに向かう」の5つである。

◯フラット

当社は名実ともにフラットな社風だと胸を張って言える。役職は役割にすぎないという考え方が浸透しており、誰が言うかではなく、正しい意見が正しいと尊重される文化である。

なので当社においては命令というものは存在せず、提案または話し合いにより、納得感を大事にしながら物事が決まっていく。これには時間がかかるという側面もあるが、各メンバーが当事者意識を持ち、自ら考えながら成長していけるというメリットがある。

また当社においてフラットさが大事な理由として、Webサービスにおいては、数あるサイトの中でユーザーに選ばれるかどうかで生死が決まってしまうため、日々とにかくサービスをより良くしていく必要がある。そのためにはユーザーに近いメンバーを中心に、誰でも意見を出しやすい構造にしておくべきなのである。

また、僕らはまだ世の中にないサービスをつくっているので、経営者でも正解がわからないことが前提である。

なので我が社では、役職も性別も年齢も経験も関係なく、フラットな関係性が築けていると自負している。

◯自律自走

徹底したフラットな社風というのは、個人にとってはある意味厳しい環境ともいえる。なぜなら誰も命令してくれないので、自ら考え動いていく必要があるからである。

それぞれの立場で、自ら目標や課題をたて、必要なリソースを巻き込み、足りない知見はどこからか調達し、きっちり成果につなげなければならない。

新人も3ヶ月〜半年ぐらいは事業や業界のキャッチアップ期間であるが、その後は上記のような動きを期待される。

そのような環境は指示待ち型の人材にはつらいだろうし、逆に自律自走型の人材ならとてもマッチする。

◯誠実さ

誠実さは言い換えると、社内外に対して正直でいること、社会的に正しい姿勢でい続けることである。当社では日々ユーザーと接したりクレーム対応をしているが、1つ大事にしていることは、すべてが公になっても堂々としていられる判断や対応をすることである。

今の時代は企業も隠し事はできないし、SNSですぐに拡散される。なので常に正直に正しい姿勢でいることで、自信をもって事業展開ができるし、社会からの信頼も高まっていく。

ただときには判断ミスや間違うこともある。そのときでも、正直にコミュニケーションすることが大事だと思っている。

◯思いやり

フラットな社風で自律自走が重要視されているが、一方で他メンバーへの思いやりや気遣いもとても大事にされている。当社の事業は1人で完結せず、チームワークがとても重要なので、必然的にそういう採用基準になっているのだ。

Webプラットフォーム事業は構造上、誰か1人、1つのチームだけが突出しても事業のアウトプットはゼロである。PIXTAで言えば、クリエイター・コンテンツ・UIUX・トラフィックのすべてがバランスよく整わないと売上にはつながらない。

そのため常に他者に関心を持ち、うまくいかないときには知恵を出し合って励まし合い、弱っているときにはカバーし合う文化となっている。

その副産物として、これまで出産・育児を理由に退職したメンバーはゼロである(該当者は10人以上いる)。出産・育児となっても安心して既存業務を任せて離れられるし、復帰時もあたたかく歓迎される職場となっている。最近は男性メンバーも育休を取るようになって喜ばしい。

◯コトに向かう

これはDeNA創業者の南場さんの言葉であるが、僕も気に入ってたまに使っている笑。

当社ではおかしな人間関係の問題がほとんどない(たまにリーダーになりたての若手が反発を受けることはある笑)。

派閥もないし、上司の顔色を伺うこともないし、好き嫌いで恣意的に判断することもない。パワハラもセクハラもない。「俺(私)は聞いてない」というセリフを聞くこともない笑。周囲の人間関係に左右されずにコトに向かい、成果を上げることに集中できる文化である。

また何かミスがあったりうっかりで失敗しても、人を責めることはなく、どうすれば解決できるかに集中する。必然的に感情的になる機会がほとんどなくなり、余計なストレスが生まれない。

ちなみに余談であるが、僕は創業以来15年間、会社で人に怒ったことがないのだが、例外としてこれまで2回だけ本気で怒ったことがある。1回目は、役員で台湾出張した際に、役員の内田さんにホテルの部屋で僕のコーヒーにこっそり紹興酒を混ぜられ、吹き出してベッドのシーツが汚れたとき。2回目は、オフィスで納会の終わりに、役員の内田さんにカバンを隠されて、30分探しても見つからずに終電がなくなりかけたときである。

最近は内田さんも落ち着いてきて安心して過ごせている。

-----

以上いいことをいろいろ書いたが、もちろんいいことばかりではない。例えば気遣いをするあまり、違和感を放置してしまったり、本の中にある「反対し、コミットする」という必要なプロセスがなされなかったりすることがある。

またいくら自律自走とはいえ、適切なフィードバックがされなかったり放置されすぎると成長機会が限られてしまう場合もある。今後の事業展開を考えると、偶然と本人努力だけに任せすぎず、計画的にリーダーを生み出していくことも必要だと思っている。

まだまだあるが、これらがピクスタの組織文化の主な特徴である。

ところで「Who You Are」には、考え方ではなく行動が文化を決める、と書いてある。いくら口でいいことを言っていても、人はリーダーの行動を見て判断する。たしかに当然のことである。

なのでこれらの特徴は、経営陣が日々行動として実践することが大事であり、実際今の役員を見ても、自然と行動できていると自負している。役員だろうが床にゴミが落ちていたら自然に拾い、現場が困っていたら自ら実務やトラブル対応を買ってでる行動を続けたい。

-----

当社の企業文化は、これまでクリエイティブ・プラットフォーム事業を育てていくために必要な要素が生き残り、浸透してきたものである。

そしてそれがリモートワークによりさらにうまくフィットしていると感じている。

ただ本にも書かれているが、今は事業構造と戦略に対して企業文化がマッチしていると思っているが、今後時代の変化によって変わっていく部分もあると思う。

これからも自分たちのアイデンティティを見失わずに進化していきたい。