在宅勤務に移行してわかったこととリモートワークの未来


我が社が在宅勤務に移行してはや2ヶ月以上がたった。

いろいろと落ち着いてきたので、100人ぐらいの規模の会社(東京オフィスの人数)がフル在宅勤務体制に移行してどうだったかを書いてみる。

ちなみに在宅勤務とリモートワークの2つは割と異なっていて、特に今は強制的に自宅のみで仕事をせざるを得ない、特殊な状況ということは留意しておきたい。

実は僕自身が2年前から、基本リモートワーク気味に仕事をするようになっていて、会議と来客以外はあまりオフィスには行かなくなった。

去年までは自分の席も一応あったが、荷物置きになっていて2年間ほぼ座ったことがない。なのでスペースがもったいなので、年末の席替えで自分の席はなくし、荷物は空いてる席に置かせてもらっている笑。

なぜそうなったかというと、2年前に大きなきっかけがあった。

こちらの記事にあるように、2年前に3人目の子どもが生まれるときに妻が1ヶ月入院し、上の2人の子どもを1人で面倒見なくてはいけなくなった。

妻入院で突然の育児ワンオペ!働き方が根底から変わった

このときはそれなりに大変だったのだが、一気にリモートシフトしてみると、仕事に関してほとんど支障がないことに気づいてしまった。もはやどこにいても同じように仕事ができるということに。

それからは、オフィス関係なくできるだけ集中できる環境を選択していった結果、育児作業が必要な時間は自宅、それ以外は渋谷駅そばに個人で借りたコワーキングスペース、必要なときは会社オフィスというワークスタイルに移行したのであった。

今まではそれが可能なのは、直轄の部署やプロジェクトを持たない経営者だからだろうと思っていたが、今回全メンバーが図らずも強制的に在宅勤務となった。

なのでこれが大きなきっかけとなって、メンバー的にもオフィスに行かなくても仕事できるじゃん!となり、もう元の状態に戻ることはない、かもしれない。現実には出社したほうが良いメンバーもいる&効率がいいことも一定程度はあるだろう。

そのため出社orリモートのミックスになっていくかもしれないが、2〜3年後に会社のワークスタイルがどうなっているかは、正直まだ明確にはわからない。

さて前置きが長くなったが、在宅勤務をやってみてわかったこと、感じていること。

◯基本的にはスムーズに業務がこなせている

僕らのようなインターネット企業は、下記ブログでも書いたとおり、元々のコミュニケーションがチャットやクラウドツールをベースにしたオンライン主体なので、多くの部分で変わりはない。大きく違うのは会議ぐらいである。

21世紀型組織運営とは

会議も大体のメンバーが海外拠点とのオンライン会議に慣れていたので、対面よりもやりにくい部分は多少あるが、それも慣れていくと割とスムーズにこなせている。

また、勤怠や進捗がある程度は乱れるかもと予想していたが、メンバー全員が驚くほどしっかりとやってくれている。これも採用時に、信頼できるかどうかといった人格面、また自律自走人材かどうかを優先する当社の選考基準が、在宅勤務になってうまく作用していると思う。

◯個人のプライベート環境の影響が大きい

これもある程度は予想できていたことではあるが、自宅の備品やネット環境、また家族構成などによって在宅作業のしやすさが大きく変わってくる。

僕らは環境整備のために全員1万円支給したが、そもそも1人暮らしで机を置けるスペースがない、というメンバーもいて、そこは申し訳なく悩ましいところである。

また我が家もそうだが、小さい子供がいて保育園に通わせられない期間に突入後、一気に集中できる時間が限られてきた。当社の場合は、もはや子どもと同居してて仕事にならないメンバーのために、人事部が特別休暇制度を設けてくれて、何人かが利用している。

この部分は在宅勤務からリモートワークに移行すれば、カフェやシェアオフィス利用などで一定は解決できると思う。

◯新人の入社対応や育成はなんとかやれる

当社には3〜4月で数人の入社があった。入社対応から社内紹介、最初のオリエンテーションまですべてがオンラインで進め、その後実務に入るのもオンラインである。

事前に少し不安はあったが、人事部の工夫もあって結果的には問題なく進行できている。

やはり対面よりも頻度高く丁寧にコミュニケーションすること、またチャットベースのコミュニケーションやクラウドツールにも少しずつ慣れてもらうことで、徐々にフィットしてくれている。

もっとこなれていけば、インターンや新卒の教育なんかも問題なくやっていけると思う。
(社員教育という言葉は好きではないが)

◯対面じゃないと得られないこともある

実は地味にこれが1番問題ではないかと感じていることが、対面じゃないと得られない偶発的な気づきや発見、いわゆるセレンディピティである。

これまでも事業を進化させるアイディアや組織課題の発見は、たまたますれ違ったときに話した内容や、ランチでの雑談から得られたことも多い。

これが在宅勤務での予定された会議、目的を持ったチャットコミュニケーションだけではなかなか偶発的な機会が生まれない。

今後は意図的にそれが生まれる機会をつくっていく必要を感じている。

◯孤独問題

特に1人暮らしのメンバーは、人知れず孤独を感じている場合もあると思う。ただこれは、今の外出自粛の状況によるところも大きい。


現状ではこんなところであるが、コロナ問題が収束した際にワークスタイルがどうなっていくのか。

僕らは昨年からオリンピック時期をターゲットに、リモートワークを徐々に導入しようとしていた矢先だったので、コロナ問題に関わらず今後もリモートワークが当たり前になっていく可能性が高い。

それを踏まえると、これまで固定観念で当たり前だったことが、実は不必要になったり変えていくべきかもしれないことが次々と浮かんでくる。

例えば以下のようなことが考えられる。

◯オンラインが主で、リアルが補完

これまでのコミュニケーションとして、リアル主体でオンラインで補完だったものが逆転し、オンラインが主でリアルで補完されるようになるだろう。

社外・社内問わずコミュニケーションがオンラインベースになり、人と会うのは親交を深めたりブレスト的な気づきを得たい場合に限られる。

そしてそれはオフィスではなくてもいいので、オフィスの概念が大きく変わる。ともない、固定デスクの存在意義や通勤の必要性もなくなってくる。

◯労働時間の概念がなくなっていく

これまでは決まった勤務時間で働いていたが、それは大量生産時代の工場勤務であったり、足で稼ぐ営業活動が主体の前近代的時代につくられた制度であり、もはやいつでもどこでも仕事ができる知的労働にはそぐわない。

そして知的労働は、いつでもどこでも成果を出せるため、自分に合った時間や場所で仕事をすることになるだろう。それに一律の労働時間をあてはめることがむしろ弊害になっていくだろう。

◯新卒一括採用からの新人研修という流れの終焉

会社全体がリモート化して自由度が増してくると、一度にたくさんの学生の選考をこなすことは、いっときの業務過多が前提になるのでむしろ効率が悪くなる。

またワークスペースが分散されてくると、企業・学生ともお互いに実態を把握しづらくなるため、一定期間インターンをしながら会社を選んでいくスタイルが主流になっていくだろう。

さらに同じ時期にたくさんの新人が入社して、ゼロから研修ベースで教えることも同様に無理が出てくるので、入社時期は個人ごとに異なり、基本的にはOJTベースで教育がおこなわれていくだろう。

◯結果として学生時代の意識で差がついていく

これまでの企業がまるっと面倒を見てくれた時代は急速に過ぎ去り、学生時代から主体的に思考し、自分のキャリア・未来を選択していく人材を企業は優先していくようになるはずである。


ということで、当社のみならず、これからリモートワークの当たり前感覚が徐々に多くの企業に浸透していくことは間違いない。上記以外にも、書類がすべてデジタル化・クラウド化されたり、印鑑がなくなったりなど、細かい変化はたくさん起こっていくと思う。

いろいろなことがリモート化に最適化されていき、今は想像もしないような仕組みや制度、ツールが普及していく可能性が高い。

そこに柔軟に対応でき、常に企業としてのベストパフォーマンスを発揮できる状況にしていくことが経営者の役割であり、それができる企業とできない企業では大きな差が生まれていくだろう。

僕らも主体的に変化適用し、変化を創造していきたいと思う。